第3回 仕事インタビュー 宇佐見 千絵さん(2)

クレームがほとんどない!? -満足して買ってもらうためには

 仕事を始めて1年が過ぎましたが、分かってきたことは、お客様のことを考えて接客して買ってもらえた商品にはクレームが少ないということですね。逆にお客様に呼ばれて「これ下さい」って言われただけで売れた商品は、クレームの数が多い。お客様に「すいませーん」って呼ばれてからはじめて接客するっていうことは「もっと近くに来い」っていうことを意味していると思うんですよ。お客様が接客して欲しがっているかどうかを常に気にかけておいて、その視界に入る距離に立ちながら、必要な時にこちらから声をかけられるかどうかが勝負。これが「接客」と「作業」との違いだと思うんですね。お客様に呼ばれて行って、商品をレジカウンターまで動かすだけだと単なる作業になってしまう。せっかく買っていただいたのに、クレームが出てしまったら意味がありません。だから色んなことを考えると、やっぱり私たち販売員は「接客」をしなければならないと思いますね。

 また時間をかける、急がない接客というのもあると思います。何日にも渡って来店し、購入する商品を迷われているお客様が「やっぱり今日もどれを買うかを決められません」って言ったとしても、私だったら「全く問題ないですよ。サイズが絞り込めてきたんで、あとは色だけですね」って言うと思います。お客様に満足して買ってもらうことが一番大事だと思うので、別に急いで買ってもらおうとは思わない。だから「こういうタイプの色がお好みでしたら、こういった色などもありますがいかがでしょう」っていう感じで一歩ずつ進める。そうやって何日にも渡って接客をしたお客様からは、クレームがほとんどないんです。それだけお客様との関係が深ければ、お客様自身が満足して買ってくださっているので、もし多少の問題があってもクレームにはならないんですよね。だから販売業の仕事って、ただ店頭に立って商品を売るってことだけじゃないって思っています。

19,800円も1,000,000円も同じ - お客様を選んではいけない

 あと当然のことかもしれませんが、お客様を選んで接客してはいけないと思っています。19,800円のソファーでも1,000,000円のソファーでも、「ここで商品を買ってくれる」ということに対して接客をしないといけない。なによりまず「お客様が家を出て、わざわざ足を運んで、うちのお店を選んでくれた」っていうことに対して「ありがとうございます」っていう気持ちを持たないとダメだと思います。だから金額は関係なく、すべてのお客様は同じお客様としてきちんと接するように心がけています。

 もし自分の売り上げだけを考えてお客様を選ぶ接客をしていたら、それはお客様のことをしっかりと見ていないことにつながると思うんですよ。逆に自分の売上よりも、お店の売上げを見ると、お客様の顔色や満足度も見えてきます。先月よりお店全体の売上が上がったということは、多くのお客様にお店に来ていただき、満足してもらえたってことにつながりますよね。だから私は個人の売上げよりは、まずはお店の売上げを考えるようにしています。それによってボーナスの金額が変わるかもしれないけど、そこは深く考えません。むしろ自分の売上げを達成しても、お店の売上げが下がっていたら、結果としてはお客様から選ばれなかったという事実は残りますからね。そっちの方が大事だと思うんです。

会社の仲間との写真

高校生の自分 - 来る日も来る日も新体操

 (今回のインタビューのテーマである「どんな感じの高校生でしたか?」の問いに)もう新体操ばっかりやっていました。それだけですね(笑)。でも本当に充実していた3年間だったと思っています。

 私は高校から新体操を始めたんですけど、インターハイや国体や国際試合などに何回も出させてもらって毎日が本当に楽しかった、というより、楽しすぎた(笑)。来る日も来る日も新体操の練習ばかりで、他のみんなより3倍くらい多く練習していたんじゃないかと思いますね。別に一番になりたいと思っていたわけじゃなくて、自分で納得ができるかどうかが基準。だから毎日の練習に関しては、まさに自分自身との戦いでしたね~

 高校には一回風邪をひいた以外は皆勤賞でした。でも新体操の試合がたくさんあったので、正直授業は3分の2くらいしか行ってなかったと思います。それくらい高校時代はいろんな土地に行かせてもらって、いろんな試合に出させてもらいました。旅行でも、遊びでもなく、いろんな土地を回ったっていう経験は大きかったですね。当時は日本代表として日の丸を背負って試合に出ることもあって、監督の先生からは「あなたは北海道を背負ってるんじゃない。日の丸を背負ってるのよ」って言われたこともありました。遊びどころではない、真剣な部活でしたね。

 新体操をやりたいと思って、親元を離れて見知らぬ土地の高校に入学し、寮に入りました。高校から新体操をはじめたんで、はじめは誰も友達がいなくて大変なことも多かったです。練習も厳しくて辛い時もあったけど、そこで辞めたら親元を離れて新体操をはじめた意味がなくなってしまう。それに「辛いからって辞めてどうするの?」「自分は一体はここに何をしに来たの?」って、自分へのプレッシャーはあったと思います。だから「3年間やりきらないと」っていう意地みたいなものはありましたね。

 でも単なるプレッシャーは自分の身体や精神をマイナスにするだけなんで、それはよくないなって思っていました。これを「楽しいこと」に変えないといけないと思って、「自分の納得のいく演技をしよう」っていう風に変化させていました。そうしないと絶対に楽しくはならない。こうやってプラス思考になれるかどうかで、自分自身が成長できるかって変わってくると思うんですよ。「自分はこういうところがだめなんだよなー」って思うだけのところから「こういうところがだめだなー。だからこうしよう」って思えるかどうか。プラス思考で向上心を持って取り組めたからこそ、高校生活を振り返っても「楽しすぎた」って言えるんだと思います。

 高校生の時には、家具の販売員をやろうなんて考えたこともなかったです。大学にも、特に明確な目的があって入ったわけではありません。私の場合は高校生の時はとにかく新体操。将来のことを考える余裕もありませんでした。だから大学で色んなことを学びながら考えようって思っていましたね。

 当時は東南アジアの国々に興味があったので、何かを学ぶならそういった興味のある国のことかなと思い、「アジア文化学科」という学科を選びました。中国語や韓国語、タイ語、アラビア語などを学んでいたんですけど、今のところはそういった学びは現在の仕事とは関係してこないですね。これからどうなるかはわかりませんが。

 でも小中高と過ごしていく中で、自分は人とコミュニケーションをとることが何より好きだなっていうことに気付いたんです。「しゃべるな」って言われるのは、私にとって「死ね」って言われるのと同じことかもしれません(笑)。いま思うと部活を除いては、友達と会話するために学校に行ってたようなものかもしれません。コミュニケーションを取るために学校に行って、その延長にやっと勉強があったっていう感じです。だから高校のときから接客をしたいなんてことは思ったことなかったけど、パソコンに向かって一人でなにかを黙々とこなしていく仕事は100%向いてないと思っていましたね(笑)。

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